グローバルチームマネジメント覚書 あるいは侍流マネジメント

ボストンに来てから約2年ちょっと。4人で始めた我がチームも、20人近くまで増えてきた。
60人近く面接して、採用し、増やしてきたので、1人 1人に思い入れがある。我がチームは、
グローバルチームで、アメリカ人が6人、ドイツ人が5人、インド人が⒋人、ロシア人が
1人、スウェーデン人が1人、 オーストラリア人が1人、それに日本人の私。
モチベーションも能力も高く、お互い助け合ういいチームだと思う。グローバルチームを
マネジメントしていて、 いくつか大切だなと思うことがあるので、まとめておきます。
あくまで、現場で感じる私見ですが。

1. 人は、国籍にかかわらず、同じであるという前提に立つ
アメリカ人だから、ドイツ人だから、インド人だから、中国人だからこうだよね、という
ステレオタイプから入らないことが大切だと思う。一人一人違うし、 ある意味、人間だし、
一人一人同じだとも言える。喜怒哀楽。喜びもあれば、怒りを感じることもあれば、
哀しくなることもあれば、楽しくなることもある。家 族のことを大切にしたいという
思いもあるし、成果を出したいと思うし、評価は気になるし、美味しものは食べたいし、
給料は多いほうがいい。
日本は、どうしても日本人という縦の軸が強くなる。清潔好きで、礼儀正しく、重厚な
文化を持っているということを誇りに思ったり、ある時には、将来を悲 観したり、
自己嫌悪や自信喪失したりする。もう一度美しい日本を取り戻そうとか、もう一度
強い日本をみたいな話になる。でも、日本は、美しいし、日本人に 素晴らしい人も多い。
足りないものは、日本という縦の軸ではなく、あるテーマで日本人が、国籍関係なく、
繋がっていく横の軸だと思う。王様と私の渡辺謙のように。
目的を同じとするチームにおいては、国籍の違いよりも、一人一人の役割や責任、
貢献のほうが大切になる。人は、人であるという感覚が大事な気がする。

⒉ 一人一人と向き合い、絆を作る
とは言え、人は同じではない。一人一人全く異なる。将来的に家の事業を継ぎたいと
考えている人もいれば、子供も生まれ、家を購入したので、昇進したいと 考えている人
もいる。人はそれぞれである。日本でプロジェクトマネジメントをし始めた頃に、
ある上司に、「お前は、メンバーのことをどれくらい知っている か?仕事のこと
ではなく、どういう家庭環境にあって、どういうことに悩んでいて、何を大切に
思っているか、知っているか?」と聞かれて、愕然としたことが ある。仕事のこと以外、
何も知らなかったからである。それ以降、日常会話の中で、なるべくいろいろなことを
聞くようにしている。兄弟姉妹のことや、趣味の ことや、どんな車に乗っているのかと
いったことや、週末どんなことしたのかとか、好きなドラマとか映画の話とか、
真面目に将来の夢なんかについても聞いた りする。もちろん、うっとうしくない
くらいにさりげなく、時に文脈に応じて、真面目に。一人一人と真摯に向かあうことが
大事だと思う。
一人一人を理解しようとするレベルになって、国の歴史や言語、文化の話がでてくる。
言語を学ぶことは、文化を学ぶことだと思う。今年は、世界史を学びな おしたり、
インド人のメンバーが多いので、ボリウッドの映画を見たり、ドイツのメンバーに
ドイツ語でメールをしたりする。一朝一夕には、いかないが、そう いう日々の
積み重ねが、お互いの文化を尊重したり、一人一人を理解する上で、大切だと思う。

3. 自由度を担保する
知識労働者で、もっとも大切なことは、自由度を担保することだと思う。最近、
料理を作ることが面白くなってきた。面白いのは、材料から考えて、できあがりを
イメージしながら、いろいろなものをクリエイティブに組み合わせていく過程が面白い。
結果として娘たちが喜んでくれれば、尚更である。ところが、家内 から、それは、
順番が違うだとか、これは、こういう風にしてとか、指示が飛んでくると、やる気が
なくなってしまう。助言はありがたいものだが、指図される のは、嫌な感じだ。家内も
悪気があるわけではなく、その辺のところは、心得ていて、僕が料理を始めると、すっと
キッチンからいなくなってしまう。必要なと きに、教えてもらう、そういう感じだ。
同じように、メンバーにも自由度を与え、創意工夫をうながすことが大切だと思う。
とはいえ、チームとして、ゴールは 達成しなければならないので、何をなすべきか
というところは合意し、やり方を任せるという感じがいいと思う。

4. 学んでいる感を作り続ける
日本と違い、合わないなと思ったら、比較的簡単に転職してしまう。幸い、私のチームは、
これまで一人しか辞めていないが、組織全体でみると転職する人は 多い。転職は、
キャリアを作っていく大切な手段の一つと位置付けられていると思う。メンバー一人一人
が、去年の自分と今年の自分が明らかに違って、成長し ていると実感できることが
大切だと。そのためには、この3ヶ月はこういうアサイメントで、その次のステップは
こうで、という一人一人のパーソナルな成長ス トーリーを描くことが大切だと思う。
トピックとして、戦略的にやらなければならないことがあるので、そういう機会と、
個人個人の成長プランをマッチングさ せ、少しストレッチした学ぶ機会を作り続けること
が、メンバーを成長させるし、全体として、チームのパフォーマンスが上がるように思う。

5. 繋がっている感、役立っている感、認められている感を醸成する
自由度があっても、学んでいる感があったとしても、最終的には、チームのために
役立っているという感覚が重要だと思う。自分が付加価値を生んでいるとい う感覚。
この感覚は、モチベーションの最大のドライバーのような気がする。メンバーが何か
重要な貢献をしたら、都度、その場その場で、貢献を明示的に認 め、感謝の意を伝える。
特にアメリカは、ポジティブフィードバックの文化で、褒め称えるのがデフォルトなので、
日本人の僕としては、ギアを入れ替えるくら い、気をくばる必要がある。Awesome!

6. 困っているときは、腕をまくって、助ける
日常的には、メンバーがプレイヤー、僕は、メンバーが最大限に力を発揮できるように
するプロデューサー。あるいは、場の設計者だと思っている。なので、 普段は、
プレイヤーにならないようにしている。ところが、日々トラブルは発生し、メンバーの
手に負えないことが起きてくる。そういう場合は、時間投入し、 手を突っ込んで、
本気で助けることが大切だと思う。問題を解決することが大事なのはいうまでもない。
結果として、自分に対する信頼が高まることもだが、多 分、それ以上に、何かあったら、
助けてくれるという安心感が大切な気がする。放置はいけない。メンバーは、どんどん
チャレンジし、困ったことを僕に相談す る。僕は問題を解決する。これは、チームの
パフォーマンスを上げるうえでも、メンバーの力量を見る上でも大切。そういう流れを
作ることが大切だと思う。

7. あればいい程度のものは捨て、楽しい雰囲気を作る
チームが増えているのはいいことだが、逆に言えば、常にリソース不足ということ。
我がチームは、非常に忙しい。どうしても、切羽詰まった雰囲気になりが ちだ。
切羽詰まった状態も時には必要だが、常態化するとあまりいいことはない。
マネジメントとしての大きな仕事は、思い切って、あればいいかなというもの
は捨てることだと思う。
そうすれば、メンバーは、大切なものに集中できるし、気持ちが楽になる。もう一つは、
ユーモアで、笑いの絶えないチームにすること だと思う。例えば、日々の会話で、
ユーモアを交えるにしていることに加え、月に1、2回は、メンバーの誕生日がある
ので、それぞれにカスタマイズして、何 か面白い要素を必ず織り交ぜて、誕生日
メッセージを送るようにしている。アメリカンジョークはよくわからないが、
日本流でも、なんとか通じている。

8. いろいろいいましたが、一番大切なものは、愛ではないかと思う
チームは、一人一人の人によって成り立っているので、やはり、どれくらい思われて
いるかとうのは大事だと思う。愛というのが、ロマンチックすぎるのであ れば、
仁でもいい。僕の名前だし。武士道の最高の徳で、思いやりの心。思いやりの心を
持って、チームをマネジメントする。そういう日本人としてのきめ細かいマネジメントを、
Samurai team managementと勝手に名付け、チームメンバーには説明している。

以上、雑文ですが、覚書までに。JinK.

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