チームをベースとした組織デザイン

書評

by General Stanley McChrystal, U.S. Army, Retired

「驚愕のマシーン (an awesome machine)」
訓練された兵士、最先端のインテリジェンス、ミッションを最短で確実に遂行する部隊。
マッククリスタル将軍は、自ら築き上げた米陸軍部隊に、絶大なる自信を持っていた。

ところが、その「驚愕のマシーン」も、国際テロ組織アルカイダとの戦いでは、劣勢を
強いられる。人材、情報収集力、分析力、兵器、訓練された統率の取れた動き、
どれをとっても負けるはずのない戦いだった。
何がいけなかったのか?そういう問いから本書は始まる。

彼がたどり着いた答えは、組織のあり方、組織デザインの差だった。
一般的に、指揮命令系統、特に指揮を執っているコントロール部分を破壊すれば、組織は
瓦解する。ところが、テロ組織は、目的は共有しているものの、ばらばらに散らばった
小部隊の塊で、自律的に動く組織だったのだ。仮に、上層部の一部に壊滅的な打撃を
与えても、組織は瓦解しない。
誰もがナンバースリーで、雨後の竹の子のように、いろいろなところでいろいろな動き
が出てき、予測がつかないのだ。まさに神出鬼没という感じだ。

一方で、米陸軍は、ある予測のもとに、ミッションを定め、トップダウンの指揮命令
系統のもとに、ミッションを遂行するいわゆる上意下達型組織となっている。
神出鬼没型の敵に対しては、上意下達型の組織では、対応できない。その場その場の
判断が求められているところでは、上意下達型では、遅れをとってしまうからだ。

そこで、彼は、上位下達型の組織から、チームをベースとした組織デザインへの変更
に着手する。

  • 自律的に動けるチーム単位に編成する
  • 各チームに、部隊全体としてのビション、達成したいゴールについて共通認識
    を持たせる
  • チーム間で、可能な限り情報を共有する
  • チーム間人材異動を行うことで、全体として各チームがどう連動して動くのか
    というシステム全体の理解を深めさせる
  • 個々のチーム力を組織力へと高めるために、チーム間をつなぐ連携オフィサー
    の役割を設ける
  • 意思決定の思考プロセスを見える化、教示し、チームに意思決定の権限を
    思い切って委譲する

そういう組織への変更をリーダーが支持すれば、チームメンバーは、リスクをとって
自ら意思決定をし、動く人が増える。同僚がそのように成功するのをみることで、
さらに多くの人がその方向で動くようになり、現場で起こっていることを我が事
のように捉えるようになる。これは、まずいかなと感じるところまで権限委譲する。
そうするとリーダーにとって、何が肝なのかが見えて来る。結果として、スピードが
高まるだけでなく、意思決定の質も高まる。自ら意思決定したことについては、
その結果に対しても深くコミットするようになる。
今日の70%正しい解のほうが、明日の90%正しい解よりも価値が高い。なぜなら、
状況は刻一刻と動いているからだ。

組織デザインの変更は、リーダーシップのあり方についても変更を迫る。チェスの駒
を動かすチェスの達人になるのではなく、組織を生態系と捉え、まるで個々の植物が
育つように環境を整える庭師のような存在にならなければならない。

2011年、アルカイダとの戦いは、その指導者の死によって、一つの節目を迎える。
彼は、組織デザインの変更が与えたインパクトは、はかれしれないと言う。

この話は、軍隊に限られる話ではない。本書では、この新たな組織デザイン、
チームをベースとした組織デザインについて、歴史や、一般企業の事例も交えながら、
語っていく。
実際、迅速に、しなやかに環境適応できる組織設計は、上司のいない自律型組織
というデザイン(Holacracy) を取り入れているザッポス、ITのアジャイルを一般の
組織への応用を図るSpority型組織、あるいは、デジタル組織など、いろいろな
キーワードで語られている。彼は、退役後、このTeam of Teamsというアイデアを
普及させるため、CrossLeadというコンサルティング会社を始めた。

この流れはかなり面白い。
現実的には、自律型組織への改革は、難易度は高い。組織のオペレーティング
システムを入れ替えるような話で、組織設計だけでなく、人事・キャリア制度、
報酬、チームを支えるインフラなど、仕組みを入れ替えないとうまく回らないからだ。
今のところ、ザッポスも苦戦中のようではある。
でも、21世紀の組織は、確実にこの方向に向かっていくと思うな。

日本は、もともと現場の知恵を活かすという文化や、定期異動などで全体のこと
を考えるバランス感覚みたいな良い面はあるが、複数のキーパーソンにお伺いを
たてるという文化もあるから、いろいろと複雑で厄介。迅速で、環境適応力もあり
しなやかな組織というのは難しい。
でも、つまるところは、リーダーの肚のくくり方のような気もする。

軍隊という組織でも、こういう変化が起こっているということで話としては
面白かったし、考え方は共感するが、最も知りたかった点、実際にどうやって
実行していくのかというところの考察が弱かったので、星3.5という感じ。
それは、CrossLeadにコンサルティングを頼んでくれよという話かな?

JinK.

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