Happy New Yearを巡る文法の謎

アメリカは、正月3ヶ日という習慣がないので、クリスマスあたりから年末、1日と休んで、1月2日から仕事始め。そこから心機一転全速力という感じだ。やる気満々の仕事のメールと共にHappy New Yearのメッセージが一杯送られてくる。

Happy New Yearの文字を見ていたら、ふと思い出したことがある。
中学生の頃、もう30年以上前のことであるが、”Happy New Year”には、不定冠詞”A”をつけなければならない、つまり、”A Happy New Year”としなければならないと誰かに教わったということだ。しかし、ネット上でも指摘されているように、これは間違いで、”A Happy New Year”は単体の表現としては使わない。アメリカのカードは、全て”A”なしの”Happy New Year”だ。日本でも、年賀状ソフトなどで、まだ”A Happy New Year”となっているデザインもあるかもしれないが、この種の間違いは大分減ってきているのではないかと思う。

Aをつけるのは、yearが数えられる名詞であることから来ていると思うが、これは、”I wish you a Happy New Year.”という文の”I wish you a”が省略されていると考えるとわかりやすい。ちなみに「日本人の英語」の著者マーク・ピーターセンが書いているように、冠詞は後にくる名詞から考えてつけるというよりも、後に来る名詞の意味的カテゴリー・形態を決めると考え、”I wish you a/ Happy New Year. “と切った方が応用がきくように思う。”I wish you a/ Merry Christmas.”, “I wish you a/ Happy Birthday.”  “I wish you a/ wonderful holiday”という具合だ。不定冠詞 a の後の名詞は、意味的カテゴリーが同じであれば入れ替え可能だ。一つの形が決まった、あるいは始めと終わりのある単位性のあるものがくる場合は、不定冠詞 a を使う。”Merry Christmas”、 “Happy Birthday”も不定冠詞”A”が省略されていて、”アハッピーバースデートゥーユー♪”とは誰も歌わない。それと同じと覚えていれば、”A Happy New Year”とすることもないだろう。これでスッキリだ。

ところがである。それ以外に、”Happy New Year – a brief 2017 recap”というメールが送られてきていた。おっと”a brief 2017 recap”には、不定冠詞 a をつけるのねという疑問だ。これは、さっきと同じ理屈で考えると、例えば、”This is a brief 2017 recap.” という文だとして、”This is a”を省略できないのか?と考えてしまう。

これは、Happy New YearのHNYが大文字になっているところが鍵のようだ。大文字になっているということは、これは固有名詞であり、決まり文句あるいは呪文のようなものだ。そのため、それだけで意味は通じるので不定冠詞は省略できる。しかし、recapは、要約とかまとめという意味の普通名詞。したがって、冠詞なしには、名詞の形態、意味的カテゴリーが分からず、気持ちが悪さが残る。「一つのまとめ」というはじめと終わりのある単位性を持たせるために不定冠詞 a をつけたと解釈した。そう考えれば、とりあえずは説明がつく。

これでやっと気持ちの整理がついたと思ったら、またまた厄介なメールがあった。今度は、A very happy new year to you and your family!というメッセージだ。おいおい、Happy New Yearには、不定冠詞 a をつけないんじゃなかったのかよと当然思ってしまう。送ってきた人が文法間違っているんじゃないの!という疑念と苛立ちは隠せない。ところが後でGoogleで検索してみたらと、ツィッターなどで、A very happy new year to you!と使っている人は結構いることが判明した。やれやれである。

これは、veryという感情をいれたことで、”Happy New Year”の呪文がとけて、”Happy New Year”がばらけて、”happy” “new” “year”と”year”が普通名詞化したと考えれば辻褄が合いそうだ。普通名詞化したら、名詞の意味的カテゴリーを決めるaをつけないと気持ち悪くなるからな。そう考えると、とりあえず上の説明とも辻褄が合う。ただ、”A very Happy New Year to you”はないが、”A very happy New Year to you.” というのは時々見かける。大文字化したNew Yearは単なる文法的な間違いか、あるいは”Happy New Year”は決まり文句化した固有名詞で、それをvery happyと形容した途端、”New Year”という固有名詞の名詞のカテゴリーが気になり、それを決めなければならなくなったという解釈か?固有名詞でも、It’s a Sony(ソニーという抽象的なブランドではなくて、ソニーの製品)とか、名詞の意味的カテゴリーを決める例もあるので。

些細なことだが、ちょっとHappy New Yearを巡る文法が気になってしまった。こんなことをいつも気にして、調べている訳ではないけれど、時々、性格的に気持ち悪さをほっとけないタチなのでしょうがないか。何かもっとスッキリする説明があれば、ご教示ください。

ちなみに、冠詞の有無とか、使いたい単語とかその組み合わせ(コロケーション)を調べたいときに、Google Ngram Viewerというのを使うことがある。西暦1500年頃から現在までのある単語や単語の組み合わせがどれくらいの頻度で出てくるかを調べることができるので、使っておかしくないか調べるのに便利だ。例えば、Happy New Yearとhappy new yearがどれくらい使われているか比較したグラフがこちらだ。このグラフを見ると、happy new yearは、1830年くらいから固有名詞化が始まり、1880年頃には普通名詞としてよりも決まり文句(固有名詞)として多く用いられていることがわかる。

JinK.

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