地球温暖化と呼ぶのはやめたら?

先月末から米国の東部、中西部、南部にかけての広い地域を記録的な大寒波が襲っており凍死者が出ているようだ。さらに状況は悪化するようで、CNNは火星より寒くなるというタイトルの記事を出している。もちろん、火星は水金地火なので、太陽からの距離は地球よりも遠く、より寒いだろう。しかし、火星より寒くなると言われてもどれくらい寒いのか具体的なイメージがわかない。記事によると、ニューハンプシャーの天文台で数日前に摂氏マイナス37度を記録したようだ。同じ時期に火星の最高気温は摂氏マイナス18度だったらしい。

以前ボストンに住んでいたので、摂氏マイナス20度(華氏マイナス4度)くらいまでなら経験がある。寒い地域は防寒対策をしっかりとするので、実は体感温度は思っていたほど寒くはない。東京の方が寒く感じることもある。寒いのは外気に触れる顔だけだし、慣れて来ると摂氏零度くらいなら「今日は心地よい涼しさだね」という肌感覚だ。しかし摂氏マイナス10度を下回るとほっぺが切れるように痛くなって来る。摂氏マイナス20度を下回るとバナナでグギが打てるくらいまでカチコチに凍ると言われている。このレベルまで寒くなると、顔を防寒したとしても、外に出たくなくなる。ちなみに摂氏は、ご存知のように水の凝固点を零度、沸点を100度とした温度の単位だ。華氏は単純に言えば、人間が感じる居住可能な範囲の温度を表している。華氏零度(摂氏マイナス18度)を下回ると凍死する可能性が高まり、華氏100度(摂氏38度)を超えると生存には危険な酷暑となる。どちらの場合はも居住に適さない。アメリカで標準的に使われる華氏は未だに慣れないが、よく言えば基準が水である摂氏より人間中心のデザインと言える。華氏マイナス4度(摂氏マイナス20度)を下回ると対策なしには、やはりちょっと生命の危険を感じるレベルだ。

こういう記録的な寒波があるとトランプ大統領のツィートがアクティブになる。
年末には、「東海岸は、史上最も寒い大晦日になりそうだ。多分、我が国、他の国ではなく、我が国が何兆ドルもつぎ込んでいる古き良き地球温暖化を少しぐらい利用できるだろう」という嫌味なツィートがあった。いわゆる地球温暖化でっち上げ、陰謀論だ。地球温暖化とはアメリカの製造業の競争力をなくすために、中国が中国のためにでっち上げたコンセプトだと主張されている。

記録的な暑さが続くとやっぱり温暖化の影響かなとか、記録的な寒さが続くと温暖化は嘘じゃないかみたいな話が必ず出て来る。つまり、CO2(二酸化炭素)の増加→気温の上昇という因果関係の信頼性が問われる。こういう話が出てくるたびに、「地球温暖化」と呼ぶのはやめればいいのではないかと思ってしまう。というのも気候は、CO2が増加するから気温が上昇するという単純な単線論理で決まるわけではない。気候変動は、様々な要素が絡み合う地球気候システムの振る舞いと捉えた方が良いと思うからだ。地球気候システムの中の、CO2が増加することによりシステムが不安定化し、ある程度パターンが予測できた気候から、パターンが読めず、予測不可能な極端な天候が出現するという考えだ。極端な天候とは、巨大なハリケーン、季節外れの台風、生命を脅かすような大寒波などだ。極端な天候は、システムの安定を取り戻すための調整かもしれず、ある閾値を超えると気候システム自体が破綻し、全く予想のつかない状況が訪れるかもしれない。地球温暖化と呼ばずに、地球の異常気象化(Global extreme/abnomal weather)と呼んだ方が、誰もが不利益を被る解決すべき人類共通の問題としてコンセンサスが得やすいように思う。火星よりも寒くなるという大寒波は、実はCO2を減らす努力をやめていいというサインではなく、より真剣に制御することを考える必要があるというサインだと捉えた方がいいだろう。原則で考えておかしいと感じることは、短期的には大丈夫かもしれないが、中長期的に必ず大きな揺り戻しが起きる。仮に長期的な大気候変動サイクルにより今後寒冷化していくことがあったとしても、グローバルに協調してCO2の量をコントロールすることに価値はあると思う。有限の資源である化石燃料を燃やし続け、CO2を出し続ける社会に未来はあるのだろうかと思う。5世代くらい後の子孫に資源を湯水のように浪費し、後戻りできなくした最悪の世代だ言われないようにしたい。どうせならサステイナブルな社会への道筋を創ったという希望の世代と呼ばれたい。しかし温暖化に限らず、企業の不祥事、財政赤字のような問題も、常に、根拠に乏しい希望的観測や突拍子もない理論、陰謀論みたいな議論が出てき、問題が先送りされていく。危うい微妙な均衡が崩れて、後戻りできない状況になるのは、正直怖いなと思う。火星より寒いっていうのも怖いけどね。

JinK.

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